小林卓之氏の再審請求事件

　2011年2月14日、痴漢冤罪事件について再審請求をしました。再審請求人の小林卓之さんは、2005年3月18日西武池袋線の電車の中で女性に痴漢行為をしたとして他の乗客により逮捕されました。小林さんは一貫して犯行を否認しましたが、強制わいせつ罪で起訴され、一審の裁判所は、懲役1年10カ月の実刑判決を下しました。小林さんは、控訴審、最高裁と争いましたが、2010年7月に上告棄却され、1年10ヶ月の刑が確定して、収監されてしまいました。痴漢冤罪事件で再審請求をしたのは、おそらくこの事件が初めてだと思います。野嶋弁護士も弁護人として再審請求書の作成に尽力しました。　この事件では、被害を受けたという女性も逮捕した男性も犯人の顔は見ていません。逮捕した男性は、犯人が犯行後に現場を離れて行って、離れて行った犯人の後姿をとても混んでいる電車内で断続的にしか見ていないと言っています。この間に犯人を見失って、小林さんを犯人と取り違えて逮捕した可能性があります。しかも逮捕した男性が述べている犯人の身長と小林さんの身長は6センチメートルも違っているのです。
　小林さんは強皮症という難病を患っていて、右手の人差指や中指が少ししか動きません。無理に動かすと強い痛みがあります。特に一本の指の間節だけを曲げることができないので、被害を受けたという女性が申告するような痴漢行為はできません。一審では医師の証言によって小林さんの指が動かないことや強い痛みが起きることが明らかにされましたが、医学についての素人の裁判官が経験則で不可能ではないと判断してしまいました。
　小林さんは、長年教職にあって、事件当時は退職していて62歳でしたが、この事件まで痴漢行為をしたと疑われたことはただの一度もありませんでした。このような方が突然電車内で痴漢行為をするとは考えられません。

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